人工腎臓

1.腎臓の働き

 腎臓には
①体内で作られた老廃物を尿中に排泄し、血液をきれいにする。
②体内の水分バランスを一定になるように、尿の量を調節する。
③血液の電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど)の濃度を調節する。
④血液が酸性に傾かないように調整する。
⑤血圧や赤血球の産生などに関与するホルモンを産生する。
 などの働きがあります。
 何らかの原因で腎臓が悪くなると、老廃物や水分などが体の中に溜まり、むくみ、高血圧、呼吸困難、吐き気などの尿毒症状があらわれます。病状が軽度な時期には食事療法や薬物療法を行いますが、病状が進行し末期腎不全の状態に至りますと腎臓の働きの代わりを行う治療(腎代替療法)が終生にわたり必要な状態となります。そのため代替療法の選択には、医学的な情報のみならず、患者さんの背景(価値観、生活様式、家族、同居状況など)に基づいて話し合いを重ねて意思決定することが重要となります。これらの意思決定方法を共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)と言います。腎代替療法には透析療法(血液透析と腹膜透析)と腎臓移植があり、SDMを行い個々の患者さんに合わせた腎代替療法を選択する必要があります。

2.透析療法とは

 腎臓に代わりに血液をきれいにする治療法で、血液透析と腹膜透析に分けられます。透析は拡散(濃度差)と限外ろ過(腹膜透析では浸透圧)の原理を用いる治療法で、上記に示しました①~④の働きをします。⑤の働きに関してはお薬で補充する必要があります。

3.血液透析(HD)について

 血液透析の概念と実際を図1に示します。血液透析は血液ポンプにて連続的に体外に取り出します。取り出した血液を、人工腎臓(ダイアライザ)に通し血液中の老廃物を除去し、きれいになった血液を体内に戻す治療法です。通常、病院やクリニックで行い、一般的な治療の回数は週3回で、1回4~5時間かけて治療を行います。わが国では透析患者さんのほとんどがこの治療を行っています。血液を体外に取り出したり、戻したりするところをバスキュラアクセスと言います。また血液透析を安全に行う機械をコンソールと言います。

図1
図1 人工腎臓の概念図
・バスキュラアクセスについて

 血管は動脈と静脈に分けられます。静脈(皆さんが一般的に採血する時に刺されている血管です)は針を刺し(穿刺)やすいのですが、たくさんの血液を体外に取り出すことが困難です。動脈は、たくさんの血液を体外に取り出すことが出来ますが、穿刺することが困難です。そのため血液透析患者さんには動脈と静脈をつなぐ処置(シャント作成)がされています。動脈と静脈をつなぐことにより血流の豊富な動脈の一部を静脈に流すことにより、血流の豊富な静脈を作ります。シャントにて血流が豊富となった静脈に針を刺して、体外に大量の血液を安定的に取り出します。多くの方が手首のところで動脈(橈骨動脈)と静脈(橈側皮静脈)を用いたシャント※1を作成しています。
 そのほかの種類として、血流の豊富な動脈を穿刺しやすいように体の表面に持ってくる方法である動脈表在化※2や血流の豊富な太い静脈に血液透析用カテーテル※3を挿入する方法などがあります。

図2
図2 バスキュラアクセスの種類
・コンソールについて

 血液透析を安全に行う機械をコンソールと言います。コンソールには血液ポンプにて安定的に血液を体外に導く部門、ダイアライザに透析液を安定供給する部門、ダイアライザにおいて血液から水分除去を制御する部門、体内に空気が入らないなどの安全対策している部門などがあります。

図3
図3 コンソールの概念図
・ダイアライザについて

 ダイアライザは30cm程度の筒状になっており、その中には多数の細い管(中空糸)が約1万本入っています。(図4)血液は管の中を通り、透析液は管の周りを流れます。この管の壁には非常に小さい孔があいています。この孔は、水や小さな物質しか通さず、体に必要な赤血球やタンパク、体に有害な細菌やウイルスは大きいためこの孔を通過することはできません。したがって、老廃物のように血液側の濃度が高く、小さな物質は血液側から透析液側に移動して、除去されます。(図5)
人工腎臓(ダイアライザ)には様々な特徴をもったものがあり、その人に合ったものを状況に応じて使用することができます。

図4
図4 ダイアライザ
図5
図5 ダイアライザの構造と原理

4.腹膜透析(PD)とは

 腹部の臓器を包んでいる腹膜を透析膜として利用する透析療法です。お腹の中(腹腔)につながる管(腹膜透析用カテーテル)を入れ、それを介して腹腔内に腹膜透析専用の透析液を入れます。腹腔内に数時間透析液を貯めた状態にし、腹膜を介して老廃物を血液から透析液に移動させ、体内から除去します。
 腹膜透析も血液透析と同じ様に、物質の濃度差(拡散)により行います。また水分は、ブドウ糖などで透析液の浸透圧を高くして、浸透圧差で除去します。

図6
図6 腹膜透析の概念図

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