人工心臓について Q8〜Q9

Q8 人工心臓の開発はどこまで進んでいますか?

(A8) 世界中で心臓移植が必要な患者さんは10万人いるといわれていますが、実際に心臓移植を受けた患者さんはわずか3500人しかいません。つまり、心臓移植は重い心臓病の患者さんの一般的治療法としては限界があります。このため半永久的に心臓の代わりをする補助人工心臓の開発が盛んに行なわれています。
 このような補助人工心臓システムは、患者さんが社会復帰できるように、小型埋め込み型で耐久性に優れ、制御装置、バッテリーもポータブルなシステムでなければなりません。このため、拍動流式から遠心ポンプあるいは軸流型へ、空気駆動型から電気駆動型へ、軸受け方式から磁気浮上型へと進化しています。
 ヨーロッパでは既に補助人工心臓の使用が認められ、1つのポンプで7年半にわたって使用された例も出ています。これは直径25 mm、長さ55 mm、重さ85 gの軸流型ポンプで、耐久性に優れたセラミック軸受けを使用し、制御装置とバッテリーはベルトに取り付けるタイプです。この患者さんは、普通の生活を送り、ゴルフ、登山なども楽しんだということです。更に最新のものでは、耐久性と血液への影響を小さくするため、磁力を利用して羽根車を浮上させたまま回転できるものも現れています。
 日本では国産の最新式磁気浮上型遠心ポンプの治験が進行中です。これから数年のうちに、末期重症心不全の患者さんの新しい治療法として補助人工心臓が登場することが期待されています。

(泉工医科工業(株) 神谷勝弘)


Q9 IABPと補助人工心臓(VAD)について教えてください。

(A9) 人工心臓に関してはこのホームページに説明されていますので、ここではIABP(Intra Aortic Balloon Pumpの略)を補助人工心臓(Ventricular Assist Devices; 以下VADと称します)と比較して説明しましょう。
 IABPとは、大動脈の中に留置されたバナナのような形状のバルーン(風船)を、心臓の動きに合わせて膨張・収縮させるものです(下図参照)。心臓から大動脈へ血液が拍出される時(心収縮期)にバルーンを縮めて、血圧を下げて心臓を収縮しやすくし、心臓が血液を吸い込む時(心拡張期)にはバルーンを膨らませて、血圧を高めて冠動脈の血流を増加させます。この二つの働きにより、心臓自体の機能回復を促します。これに対して、VADは心臓と並列に設置された血液ポンプで全身への血液循環を維持するもので、心臓の機能を代行することも可能です。VADは現在国内では、およそ年間50症例に使用されています。

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 IABPのバルーンは、検査カテーテルなどと同様な手技で大腿動脈から体内に挿入でき、VADの場合のような外科手術は不要です。そのためIABPは、循環器内科で使用されています。IABPは心筋梗塞などで低下した心臓の機能が回復するまで、多くの場合集中治療室などで1週間程度使用されます。VADのように長期間使用することはできないので、患者を歩行させる目的や心臓移植までのつなぎ(ブリッジユース)には用いられていません。IABPは現在国内では、およそ年間2万症例に使用されています。

(泉工医科工業(株) 神谷勝弘)

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