(A1)
生体機能を模倣するために、駆動メカニズムまで模倣している場合(拍動型人工心臓など)と、機能を代行することだけを考えて異なるメカニズムで運転されている場合(軸流型人工心臓、人工腎臓など)とがあります。
当学会では古典的な意味での人工臓器に加え、ハイブリッド型人工臓器や再生医療を含めた、最新医療科学について毎年さまざまな研究発表がなされています。
(A2)
- 研究所単位で集合している場合
- 医学部や工学部またはその合同の大学院に集合している場合
- 学科単位で集合している場合
- 研究室単独で研究が行われている場合
大手の医療機器メーカは何らかのかたちで、人工臓器関連の事業を行っていることが多いようです。自分が将来やってみたい研究領域や人工臓器の名称をキーワードに、検索をかけるのが早道です。
(A3)
(A4)
(A5)
(A6)
(A7)
人工心臓について
(A8)
このような補助人工心臓システムは、患者さんが社会復帰できるように、小型埋め込み型で耐久性に優れ、制御装置、バッテリーもポータブルなシステムでなければなりません。このため、拍動流式から遠心ポンプあるいは軸流型へ、空気駆動型から電気駆動型へ、軸受け方式から磁気浮上型へと進化しています。
ヨーロッパでは既に補助人工心臓の使用が認められ、1つのポンプで7年半にわたって使用された例も出ています。これは直径25 mm、長さ55 mm、重さ85 gの軸流型ポンプで、耐久性に優れたセラミック軸受けを使用し、制御装置とバッテリーはベルトに取り付けるタイプです。この患者さんは、普通の生活を送り、ゴルフ、登山なども楽しんだということです。更に最新のものでは、耐久性と血液への影響を小さくするため、磁力を利用して羽根車を浮上させたまま回転できるものも現れています。
日本では国産の最新式磁気浮上型遠心ポンプの治験が進行中です。これから数年のうちに、末期重症心不全の患者さんの新しい治療法として補助人工心臓が登場することが期待されています。
(Q9)
(A9)
IABPとは、大動脈の中に留置されたバナナのような形状のバルーン(風船)を、心臓の動きに合わせて膨張・収縮させるものです(下図参照)。心臓から大動脈へ血液が拍出される時(心収縮期)にバルーンを縮めて、血圧を下げて心臓を収縮しやすくし、心臓が血液を吸い込む時(心拡張期)にはバルーンを膨らませて、血圧を高めて冠動脈の血流を増加させます。この二つの働きにより、心臓自体の機能回復を促します。これに対して、VADは心臓と並列に設置された血液ポンプで全身への血液循環を維持するもので、心臓の機能を代行することも可能です。VADは現在国内では、およそ年間50症例に使用されています。
IABPのバルーンは、検査カテーテルなどと同様な手技で大腿動脈から体内に挿入でき、VADの場合のような外科手術は不要です。そのためIABPは、循環器内科で使用されています。IABPは心筋梗塞などで低下した心臓の機能が回復するまで、多くの場合集中治療室などで1週間程度使用されます。VADのように長期間使用することはできないので、患者を歩行させる目的や心臓移植までのつなぎ(ブリッジユース)には用いられていません。IABPは現在国内では、およそ年間2万症例に使用されています。
人工血液について
(A10)
人工赤血球の開発の方法には二つの考え方があります。一つは酸素をよく溶かし込めるパーフルオロカーボン(PFC)という物質を用いるもの、もう一つは本物の赤血球と同じように酸素と結合できるヘモグロビンを用いるものです。PFCは酸素をたくさん溶かし込めるので、水と混合して強烈にかき混ぜて牛乳のような乳化液として用います。PFCは体には無害ですが、血液の中で乳化した粒が不安定になり、血液を凝固させて詰まらせたり、臓器に影響を及ぼしたりするといわれています。ヘモグロビンを用いる方法では、血液から分離したヘモグロビンを、油の分子を使って作製したカプセル内に封じ込めます。血液と同じような酸素運搬能を有しますが、こちらもカプセルが不安定で血中で壊れたり、毛細血管に詰まってしまう問題がありますが、最近の技術革新によりかなりの問題が克服されつつあります。近い将来、脳卒中や心筋梗塞など緊急に臓器に酸素を供給する必要のある場合から応用が始まることでしょう。
再生医療について
(A11)
再生医療の目標は人間のあらゆる臓器、組織を再生することですが、現在はまだそこまで至っていません。最も成功している例は、人工皮膚、角膜、軟骨です。これらは、患者から分離した細胞を用いて生体外で元の組織に近いものに育て上げ、これを患者の患部に移植します。他に、筋芽細胞の移植による心筋の再生、骨髄細胞を用いた人工関節の固定力向上、幹細胞移植による末梢循環不全の治療などが試みられています。
再生医療の最も重要な要素は、組織や臓器を再生するための細胞の確保です。自分の細胞を用いればよいのですが、組織を再生するには長い時間がかかるため、緊急時には対応できません。そこで、他人の細胞を用いてあらかじめ臓器をつくる、細胞がなくても機能が発揮できる人工組織をつくるなどの方法が考えられています。最近注目を集めているのは、iPS細胞です。各人が自分のiPS細胞を作って組織を再生できれば細胞の問題は解決できます。現状で最も効果的な方法として、組織が再生するまで人工臓器で機能を補完する方法が提案されています。これは人工臓器の新しい使い方として注目されています。
(A12)
肝臓は「人体の化学工場」ともいわれるほど、人体の代謝反応において中心的役割を果たしています。わかっているだけで500種類以上の機能を担っていますが、それらは全てひとつひとつの肝細胞によって実現されています。それらは,糖・脂肪・タンパクといった三大栄養素の中間代謝(合成供給・貯蔵・分解),チトクロームP450と呼ばれる酵素を中心とした薬物代謝・解毒反応(水溶性物質に変換),脂質の腸管吸収を助け薬物毒物の排出にも使用される胆汁の合成(小腸の始めの十二指腸へ分泌される)、ビタミン・鉄の貯蔵と供給などが主なものです。
肝臓のマクロ・ミクロな構造に着目すると、上記の代謝反応に適した構造をとっていることがわかります。まずマクロな循環系をみると、肝臓には酸素供給用の肝動脈のほかに、栄養素のほとんどが吸収される小腸から腸間膜を経て、門脈と呼ばれる血管が直接流入しています。この2つの血管は内部で合流して、肝静脈となり心臓を経て全身に回ることになります。つまり腸管から吸収された栄養素や毒性物質は、肝臓での代謝反応を受けないうちは全身に回ることができない構造となっています。さらにミクロな構造に着目すると、肝細胞はおよそ二層に並び、微小な穴の開いた特殊な血管内皮細胞層を介して、血流と高効率で接触ができるようになっています。隣り合った肝細胞同士の結合部分には微小胆管が伸びていて、これが肝臓全体で合流して胆汁となり、胆嚢に貯蔵された後に十二指腸へ分泌されます。
このような肝臓の機能を人工的な装置で総括的に置き換えることは非常に困難であることから、「人工肝臓」としては,装置の内部に動物などの肝細胞を固定化するハイブリッド型のものについて研究が行われてきています。詳細は本ホームページの「人工臓器とは?」から「人工肝臓」のページをお読みください。装置開発に関する工学的な課題はひとまずほぼ解決されており、今後の課題は、ヒト正常肝細胞を如何に多量に得ることができるかである、といっても過言ではありません。この視点からは,ES細胞やiPS細胞から大量に能率よく肝細胞を得る技術の確立が強く望まれます。
(東京大学生産技術研究所 酒井 康行)
(A13)
ティッシュエンジニアリングの成功のためには、異なる学問分野の成果を適切に融合する必要があります。よく言われる組織工学の三要素としては,幹または前駆細胞,細胞の担体となるマテリアル、培養に必要な分化増殖因子、が挙げられますが、1・3番目は基礎医学・基礎生物学といった学問が、2番目は応用化学といった学問が、それぞれ研究を担ってきています。これに加えて、未熟な組織臓器を生体外で育成するために生物工学と、最終的な治療効果を評価してその結果を開発にフィードバックするための臨床医学、なども三要素に加えて必須であると考えています。従って、ご自身の専攻分野以外の最低限の知識と方法論を学ぶ必要があります。この目的のために、やや古くなってしまいましたが、京都大学の岩田博夫先生の書かれた「生体組織工学」(産業図書,1995年)を推薦いたします。一方、組織工学・再生医療の到達度は目的とする組織臓器によって様々で、日々進歩しています。これらについては,多数のよい成書が出版されています。もし,他分野とは言えある程度研究の経験を踏まえているならば、広範な知識を隈なく習得しようとするよりも、まずは目的意識的に必要な知識・技法を学び、予備的に研究を始めてみるのがいいかと思います。
実験に必要な設備ですが、まずは通常の細胞培養用のものは最低限必要となります。これに加えて動物実験を行うとなれば、動物飼育設備が必要となります。担体は簡単なものならば、ちょっとした努力で自作は可能ですが、今は市販のものも出ています。バイオリアクターを使った組織育成まで進めるとすれば、それらの装置を購入する必要があります。組織工学・再生医療の目的で細胞を培養する上で最大の問題は、培養液や増殖分化因子が極めて高価なことです。これも目的とする組織臓器と出発細胞に何を用いるか、によりますので、具体的に考える必要があります。
(東京大学生産技術研究所 酒井 康行)
(A14)
血液濾過透析(hemodiafil
図において血液を中空糸の内側に上から下方向に流した場合,一番左に示す血液透析では透析液を中空糸の外側に下から上に流します.血中の物質は中空糸の内側を流れる血液から外側を流れる透析液に拡散の原理で移動します.その結果血液を浄化することができます.図の真ん中に示す血液濾過では中空糸の外側に陰圧をかけます.血中の物質および水分は中空糸の内側から外側に対流の原理で移動します.その結果血液を浄化することができます.一番右に示す血液濾過透析では中空糸の外側に透析液を流すことで血液透析を行いつつ,中空糸の外側に陰圧をかけることで血液濾過も同時に行います.その結果血中の不要物質は拡散と対流の両方の原理で中空糸の内側から外側に移動します.つまり血液濾過透析は血液透析と血液濾過を同時に行う血液浄化法で,血液透析の優れた小分子量物質除去性能と,血液濾過の優れた中分子量物質除去性能を同時に兼ね備えた,理想的な人工腎臓治療と言えます.
ではこのような理想の血液浄化療法が最近になってようやく臨床応用される様になったのはなぜでしょうか?
ここで血液浄化膜の進歩についてご説明したいと思います.先に示したように,血液透析は物質の拡散現象を利用して血液浄化を行う治療です.そのため,物質が拡散しやすいように血液透析器に使用される半透膜はとても薄く作られていました.薄く作るが故に強度の問題で,あまり大きな孔を半透膜に開けることができませんでした.
一方,血液濾過は対流現象を利用して血液浄化を行う治療です.そのため濾過する際の圧力に耐えられるように半透膜の膜厚を厚くし強度を高めていました.膜が厚く丈夫なので大きな孔を半透膜に開けることができました.つまり以前は透析用の膜と濾過用の膜は全く異なる構造をしており,透析と濾過とを同時に施行する血液透析濾過に使用するにはどちらの膜も適していませんでした.成膜技術の発展に伴い,透析膜は膜孔径をより大きく,濾過膜は膜厚をより薄くすることが可能となりました.これが現在のhi-perform
余談ですが血液濾過透析の名称についてお話しします.血液濾過透析の英語表記はhemodiafil
(A15)
急性血液浄化法とは,慢性維持透析に代表される慢性疾患に用いられる血液浄化法の対極に位置する,急性期に用いられる血液浄化法の総称と考えられていることがあります.しかし,日本急性血液浄化学会の欧文名にJapan Society for Blood Purificati
急性血液浄化法について筆者が推薦図書を下に示します.ご参照下さい.
左から
急性血液浄化法,平澤博之編,1999,総合医学社,東京
CHDFの理論と実際—原理・施行法編-,平澤博之編,1998,総合医学社,東京
CHDFの理論と実際—各種疾患応用編-,平澤博之編,1999,総合医学社,東京
急性血液浄化法-あんな症例・こんな症例-,平澤博之編,2006,医学図書出版,東京.
(A16)
文献
- 日本人工臓器学会:ダイアライザー性能評価基準、日本人工臓器学会, 1982.
- 佐藤 威、斉藤 明、内藤 秀宗、鈴木 正司、秋沢 忠男、篠田 俊雄、峰島 三千男、金 成泰、秋葉 隆:報告 各種の血液浄化法の機能と適応 - 血液浄化器の性能評価法と機能分類、透析会誌 29: 1231-1245,
1996. - 秋葉 隆、川西秀樹、峰島三千男、政金生人、友 雅司、川崎忠行、西沢良記:透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準2008、透析会誌 41: 159-167, 2008.
(A17)
人工腎臓を用いた治療の長時間化、連続化が有効であることは、すでに臨床的にも明らかになっています。近未来の人工腎臓治療として、現在の血液透析を長時間化または頻回に行うものが注目されている。夜間在宅で就寝中に、安全に施行可能な透析療法が実現すれば、患者の病態は大幅に改善されるでしょう。これには、体外循環を連続的に監視するモニタリング技術とそれを安全に施行できるような制御技術、すなわち装置の改良に依存する部分が大きいものと思われます。一方、遠未来の人工腎臓治療としては、尿細管機能を付加したハイブリッド型もしくはバイオ人工腎臓の研究が15年以上前から検討されています。ティッシュエンジニアリングによる再生医療、免疫寛容にもとづく異種移植、マイクロ・ナノ技術による超人工腎臓治療などの可能性に期待したいと思います。
動物用人工臓器について
(A18)
詳しくは以下のサイトがお勧めです。
http://sc-
医療用材料に放射線を照射するときに注意すべき点を教えてください。
(A19)
人工臓器分野における放射線の利用は医療用具の滅菌が主体です。高圧蒸気滅菌、ガス滅菌(エチレンオキシドガス)、薬液による滅菌の対象にならない医療器具の滅菌に、γ線滅菌が用いられています。対象となる材料は多くの場合、高分子化合物ですので、その耐放射線性について概説します。
放射線による高分子材料の劣化は主鎖切断型と架橋型に大別でき、材料の化学構造に依存します。主鎖の炭素に水素がない場合、例えばポリテトラフルオロエチレンでは主鎖切断型劣化、水素が多く結合している場合、例えばポリエチレンでは架橋型劣化を起こりやすくなります。一般に架橋型の方が主鎖切断型より耐放射線性に優れています。芳香族系の置換基を持った高分子(例えば、ポリスチレン)は構造上、吸収した放射線エネルギーを非局在化できるため、優れた耐放射線性を示します。一方、フッ素系(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)では耐放射線性は低いといわれています。
汎用高分子の耐放射線性の比較
ポリスチレン>アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合物>>
ポリ塩化ビニル>ポリカーボネート>エチレン-プロピレン共重合物>酢酸セルロース>ポリプロピレン>ポリメタクリル酸メチル>ポリアミド(ナイロン)>パーフルオロエチレン-プロピレン共重合物>>
ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)
参考文献:大澤善次郎:高分子の寿命予測と長寿化技術, NTS, 1992, p.111
(三重大学大学院工学研究科分子素材工学専攻生体材料化学研究室 堀内 孝)
(A20)
人工膵臓とは何ですか?
(A21) 大きく分けると、機械装置(エレクトロメカニカル)と、再生材料(バイオマテリアル)を使用したものに分けられます。機械装置を使用した、ベッドサイド型の人工膵臓は、主に次の要素で構成されています。 ・血糖値を測定するセンサー ・血糖値を制御するのに必要な薬(インスリン、グルコース)の投与量を計算するコンピュータ ・インスリン、グルコースを注入するポンプ 糖尿病診断のもとになるデータを採取したり、目標とする血糖値に自動的に制御することができます。
人工膵臓は、どのような患者に使用されますか?
(A22) 1) 検査目的 糖尿病の疑いがある患者さんの重症度診断(グルコースクランプ法による) 日々の生活に必要なインスリン量と投与方法の検討 2) 治療目的 重症糖尿病患者さんの血糖管理 外科手術中、手術後の血糖管理等 外科手術、救急・集中治療分野の人工膵臓による血糖管理については、参考図書をご紹介します。 救急・集中治療Vol.21 no.11・12 p.1633-163
人工膵臓治療が受けられる施設は、全国に何ヶ所くらいありますか?
(A23)





